2018年9月20日木曜日
裸足
キッス。
ひとことにキッスといえど多種多様である。
お花畑のごとくうららかで純朴なフレンチキッス。
照れながら目をかたく閉じて、ほんの一瞬だけ二人は唇を重ね合うことだろう。
彼等には 「おやおや?お二人は付き合い始めたばかりですか?赤くなった頬は、さながらスイートピーの様ですぞ。ほーほっほっほ」と言ってあげたくなる。
はたまた日本海の荒波のごとく激しいディープキッスもある。
二人は愛を確かめ合うように舌と舌とを情熱的に絡ませることだろう。
彼等には 「おやおや?不倫ですか?昼間のファミレスは危険がいっぱいですぞ。ほーほっほっほ」と教えてあげたくなる。
サハラ砂漠のごとくカサカサに渇ききったキッスもあるだろう。
もはや女性は眉間にしわをよせている。
彼等には「もう別れたほうがええで」と言ってあげよう。
そう。
このようにキッスはシチュエーションによって様々な顔を見せるわけである。
ただひとつ。
どの世界にも例外があるように、キッスの世界にも例外があるのだ。
間接キッスである。
キッスとは名ばかりで、私の見解では間接キッスは恋愛熟練度を計るバロメーターであり 且つ、最高のギャンブルなのである。
以下は男性の視点で描いているので、もし女性がお読みになっているならば男性と女性を反転させてお読みいただきたい。
同僚の女性が「はい」と言いながらペットボトルを差し出してきたとする。
「一口飲む?」というわけである。
あなたは以前からその女性のことが気になっている。
顔は好みで性格も申し分ない。
その女性が飲みかけのペットボトルを差し出してきたのだ!
さあ、あなたならどうする?
「ん」と愛想のない返事をひとつ返して目もあわせずに飲むだろうか?
本当はペットボトルに舌をねじ込みたいだろう。
しかしその衝動を抑えて「ん」と一言。
しぶい。あなたは恋愛上級者である。
あぶない刑事時代の木の実ナナのように人差し指と中指を「ピッ」としながら「サンキュ」と言ってカッコよく飲むだろうか?悪くない。
間違いではないのだろうが、たぶんそれは時代が許さない。
そんなあなたは恋愛中級者。
「ぐへへ」と言いながら本能のままにペットボトルをなめ回すように飲むだろうか?
ちょっと気持ち悪がられるかもしれません。
残念ながらあなたは恋愛初級者です。
「いや、いらない。のど渇いてない」と言う方もいらっしゃるだろう。
そんなあなたはのどが渇いてないのです。判定不能。
「はい。一口飲む?」
「いや、いらないですよ」
「なんで~?なんで~?飲みなよ~」
「いや、大丈夫。気持ちだけいただきますよ」
「のど渇いてないの?飲みなって~」
「のどは渇いてるけどいりませんよ。ありがとう」
「のど渇いてるんでしょ~。ハチミツレモンだよ~。美味しいんだよ~。飲~み~な~よ~」
「じゃかましい!殺すぞ!仏の顔も三度までじゃ!」
と四度目にキレたあなた。
あなたは私です。そして恋愛不能者です。
そう。
私は四度目にキレ・・・ではなく、差し出されたペットボトルを飲まないのです。
なぜか?
理由は簡単。
間接間接キッスを恐れているのです。
間接間接キッス。
ペットボトルを差し出してきた同僚の女性と間接キッスをするということ。
それすなわち同僚女性が過去にキッスを交わしてきた男性と私が間接的に間接キッスをするということ。
以前、ニューハーフになるためにモロッコに行きたい。というお話をさせていただいたことがあるのだがあれは【モロッコ】という単語を使いたかっただけの嘘である。
ここに謝罪させていただく。
ニューハーフになりたい。というのが嘘だったことでお分かりいただけるように私はペットボトルを差し出してきた同僚女性の彼氏と間接間接キッスをしたくないのである。
大半の方は同性とキッスなどしたくもないのではないだろうか?
しかし。
少し考えていただきたい。
この状況だと同僚の女性の彼氏の元カノとも間接間接間接キッスできることになるのだ。
無料で。
もしかしたら同僚の女性の彼氏の元カノの元カレの元カノの元カレの元カノが超絶美人かもしれない。
間接間接間接間接間接間接間接キッスでようやくたどり着く超絶美人。
これこそが前述した最高のギャンブルのひとつではないだろうか?
なんなら、同僚の女性の彼氏の元カノの元カレの元カノの元カレの元カノが元ちとせの可能性さえあるのだ。
今度から、異性だろうが同性だろうがペットボトルを差し出されたら「どこかに超絶美人か元ちとせ・・どこかに超絶美人か元ちとせ‥」と唱えながらいただいてみてはいかがだろう?
ああ。とくに元ちとせのファンではありませんでしたか。失礼しました。
まあ、一コマ漫画で表現できそうなファーストキッスですませた私がキッスについてとやかく言うこと自体まずおこがましいのですが。
某年 吉日